ドイツ語を読むための格の知識

「格」とは

文章は単語を組み合わせて作られますが、単純に単語を羅列しても意味が通じません。 おのおのの単語が「主語」なのか「述語」なのか「目的語」なのかを明確にするために、各言語はいろいろな手段を使っています。 英語などはしっかりとした構文によって、つまり語順を厳格に守ることで意味を通じさせます。 一方、日本語は「が・の・に・を」といった「格助詞」を使い、ドイツ語は「冠詞」の形を変えることで文の構造を明確にします。 名詞そのものの形も一部の「格」では変化しますが、重要なのは「冠詞」です。 「格」は4種類あります。

  1. 1格 =主格 :主語や補語
  2. 2格 =所有格:名詞句においての所有者(〜の)・主語・目的語
  3. 3格 =与格 :間接目的語
  4. 4格 =対格 :直接目的語

名詞は、3種類の「性」、さらには複数形(ただし性は問わない)の、4種類がありますので、これに各々4種類の「格」を対応させることになります。ですから、複雑な冠詞類が存在することになります。 そうは言っても各々の名刺は「男性」「女性」「中性」の何れかに分類されるので実質的には8種類、さらには複数形の冠詞は共通なので4種類をしっかり理解すれよいのです。 そのためにも名詞は性も一緒に覚える、つまり “Ton” ではなくて “der Ton “、”Harmonie” ではなく “die Harmonie ” と覚えた方が効率がよいのです。  

格の支配

動詞は必ずどれかの「格」を必要とします。 たとえば “spielen” という動詞は「他動詞」と「自動詞」の2通りの使われ方をしますが、(mit3)で「〜と遊ぶ」、(etw4)で「〜をして遊ぶ」、(gegen4)で「〜と試合する」、(um etw4)で「〜を賭けて博打する」等々さまざまな用法がありますが、まとめると「3・4格支配」の動詞であることがわかります。 動詞によって支配する格は異なります。基本的には「1格」「3格」「4格」のどれか、またはいくつかを支配するのですが、なかには「2格」を支配する動詞も存在します。   前置詞は目的語を格支配しますが(2格・3格・4格のいずれ)、それは結局のところ動詞に格支配されていることと連動しているのです。   形容詞にも目的語を格支配するものがあります。

  • たとえば「自分自身の」という意味の形容詞 “eigen ” は3格支配で「(jm3)に特有の」という用法 → Er spielt die Geige mit dem ihm eigenen Klang 「彼は彼独自の音色でヴァイオリンを弾く」
  • 「似ている」という形容詞 “ähnlich ” も3格支配で「(jm3)に似ている」→ Er ist seinem Vater  ähnlich.「彼は父親に似ている」

名詞は名詞を2格支配します。

  • Die Kultur des vierstimmigen Satzes  「4声書法の文化」; “Satz “(作曲法)は男性名詞ですから、”Die Kultur”の主語として2格支配されています。
  • Die kümmerlich Rolle der Bratsche  「ヴィオラの貧弱な役割」

 自由な語順

冠詞の形を見れば「格」がわかる、つまりその語が主語なのか目的語なのか何なのかが分かるということは、語順を変えても意味が変わらないという自由さを有していることになります。たとえば、 Die Mutter schenkt die Gitarre dem Sohn.  (母親が息子にギターを贈る。) 

  • Dem Sohn schenkt die Mutter die Gitarre.
  • Die Gitarre schenkt die Mutter dem Sohn.
  • Dem Sohn schenkt  die Gitarre die Mutter.
  • Die Gitarre schenkt dem Sohn die Mutter.

以上の文は語順が入れ替わっていますが、全て同じ意味です。 この文の主語(1格)と目的語(4格)は両方とも女性名詞なので同じ冠詞が使われています。ですから一見、主語と目的語を逆に解釈できそうですが、そうすると意味的に通じなくなってしまいます。「ギターが母を贈る」ことはあり得ないからです。 ただし、意味的にどちらとも取れる場合は、文頭に近い方を「1格」と解釈します(女性名詞・中性名詞・複数形)。 また、冠詞のつかない固有名詞の場合も、文頭に近い方を「1格」と解釈します(女性名詞・中性名詞・複数形)。

人称代名詞の格

日本語が「私は、私の、私に、私を」のように変化するのと同様、ドイツ語も各人称ごとに格変化します。 ただし2格は所有(〜のもの)を表わすために使われるのではなく、2格を支配する動詞で用いられるものです。