ドイツ語を読むための「形容詞」の知識

形容詞の2つの用法

「美しい音」と「その音は美しい」のように形容詞には2通りの使い方があります。 ドイツ語では前者を「付加語用法」、後者を「述語的用法」として区別しています。

形容詞の述語的用法

基本的に ” sein ” によって主語と結び付けられます。 Die Melodie ist schön.  その旋律は美しい。 Die Melodie ist monoton.  その旋律は単調だ。 この用法では形容詞が主語の性別に影響を受けることはありません。その点では、イタリア語やスペイン語のような煩わしさはないわけです。

形容詞の付加語用法

形容詞が名詞の前に置かれると付加語的用法となります。 この用法では対照となる名詞の性・数・格に応じて変化します。 注意が必要なのは、もともとの名詞に「冠詞がついていない」場合と「定冠詞がついている」場合、「不定冠詞がついている」場合で形容詞の格変化のしかたが違うことです。

形容詞の弱変化(定冠詞つき)

****** 定冠詞 + 形容詞 (弱変化)+ 名詞 *********

定冠詞とセットで覚えようとすると混乱します。あくまでも、形容詞のみの変化パターンだけを理解・記憶することです。  

単数複数
男性女性中性
1格-e-e-e-en
2格-en-en-en-en
3格-en-en-en-en
4格-en-e-e-en

たとえば定冠詞に男性名詞 “Ton “(音)、女性名詞 ” Melodie “(旋律)、中性名詞 ” Instrument “(楽器)それぞれと “schön “(美しい、すてきな、りっぱな)を組み合わせると、

男性女性中性
1格der schöne Ton die schöne Melodiedas schöne Instrument
2格des schönen Tonsdes schönen Tonesder schönen Melodiedes schönen Instrumentsdes schönen Instrumentes
3格dem schönen Tonder schönen Melodiedem schönen Instrument
4格den schönen Tondie schöne Melodiedas schöne Instrument
  • 複数形では形容詞の全てに “-en ” 語尾が付加されます。性別は関係なくなります。複数3格の名詞に ” -en ” または ” -n ” が付加されることに注意しましょう。

上例をすべて複数形にすると、次のようになります。

男性女性中性
1格die schönen Töne die schönen Melodiendie schönen Instrumente
2格der schönen Töneder schönen Melodiender schönen Instrumente
3格den schönen Tönenden schönen Melodienden schönen Instrumenten
4格die schönen Tönedie schönen Melodiendie schönen Instrumente

形容詞の混合変化(不定冠詞つき)

****** 不定冠詞 + 形容詞 (混合変化)+ 名詞 *****

2格と3格の変化は「定冠詞つき」の変化と同じ「弱変化」ですが、1格と4格の変化は「無冠詞」の変化形(強変化)と同じです。つまり2種類の変化形が混ざっているのが、この「混合形」の特徴です。 不定冠詞ですから、複数形はありません。

男性女性中性
1格-er-e-es
2格-en-en-en
3格-en-en-en
4格-en-e-es

前項と同様に不定冠詞での変化形を図示してみましょう。

男性女性中性
1格ein schöner Ton eine schöne Melodieein schönes Instrument
2格eines schönen Tonseines schönen Toneseiner schönen Melodieeines schönen Instrumentseines schönen Instrumentes
3格einem schönen Toneiner schönen Melodieeinem schönen Instrument
4格einen schönen Toneine schöne Melodieein schönes Instrument

形容詞の強変化(冠詞なし)

********  形容詞 (強変化)+ 名詞 ***********

冠詞が付かないと、形容詞自体が格を明確に示す必要があることから、定冠詞とほぼ同じ変化形語尾が付くことになります。

単数複数
男性女性中性
1格-er-e-es-e
2格-en-er-en-er
3格-em-er-em-en
4格-en-e-es-e

” barock Fall”(バロック様式の衰退)、” klanglich Reinheit “(響きの純正さ)、” traurig Moll ” (悲しい短調)、実例を示すと、

単数複数
男性女性中性
1格barocker Fall klangliche Reinheittrauriges Mollschöne Symphonien
2格barocken Falls barocken Fallesklanglicher Reinheittraurigen Mollschöner Symphonien
3格barockem Fallklanglicher Reinheittraurigem Moll m-schönen Symphonien
4格barocken Fall-klangliche Reinheittrauriges Mollschöne Symphonien

 冠飾句〜付加語用法

「聴きなれぬソナタ」をドイツ語で表わすと; die  fremde Sonate となります。この ” fremd ” という形容詞は人の3格と一緒に使うことで「〜にとって未知の」という意味になります。すると「そのソナタは私は聴いたことがない」は; Die Sonate ist mir fremd. と言うことができます。ドイツ語ではこの形容詞句をそのまま名詞の前に置いて付加語的に使えるのです; die mir fremde Sonate このようにドイツ語では、名詞の前をいくらでも修飾することができます。たとえば; die mir bis heute fremde Sonate   今日まで聴いたことのなかったソナタ die als neuer Titel weltweite verkaufte CD 新しいタイトルとして世界的に販売されたCD

分詞の形容詞用法

付加語用法の一環として分詞も形容詞的に用いられます。

  1. 現在分詞
  2. 過去分詞

1.現在分詞 「現在分詞」は動詞の不定詞に ” -end ” を付けて作ります。 「現在分詞」も形容詞と同様の格変化をします。つまり付加される名詞の性数に応じます。 たとえば ” spielen ” の現在分詞形は ” spielend ”  です。これも形容詞と同じく修飾を重ねられます;

  • der spielende Vater 演奏している父
  • der mit dem Klavier spielende Vater ピアノを弾いている父
  • der im Salon mit dem Klavier spielende Vater 客間でピアノを弾いている父
  • der alle Abende im Salon mit dem Klavier spielende Vater 毎晩、客間でピアノを弾いている父

2.過去分詞 「過去分詞」の作り方は、動詞が弱変化(規則変化)するか強変化(不規則)するかによって異なります。

  1. 弱変化(規則変化) 動詞; ge  +  語幹  +  t
  2. 強変化(不規則変化)動詞; ge  +  語幹  +  en   (語幹の母音が変化するケースもあり)
  3. 混合変化動詞      ; ge  +  語幹  +  t      (語幹の母音が変化する)
  4. 非分離動詞       ; 前綴り  +  語幹  +  en /t   (語幹の母音が変化するケースもあり)
  5. 分離動詞        ; 前綴り  +  ge  語幹  +  en/t    (語幹の母音が変化するケースもあり)

過去分詞の形容詞用法には①「〜した」、②「〜された」という付加語用法があります。受動なのか能動なのかは文意から判断しなければなりません。 「現在分詞」も形容詞と同様の格変化をします。つまり付加される名詞の性数に応じます。

  • die mit zwanzig Minuten Verspätung gerade angekommene Dirigent  ちょうど20分遅れで到着した指揮者
  • das mit zwanzig Minuten Verspätung gerade begonnene Konzert  ちょうど20分遅れで開始された演奏会

形容詞の副詞的用法

形容詞は、辞書に副詞としての用法が掲載されていなくても、いつでも副詞として転用されます。

形容詞の名詞的用法

形容詞は、頭文字を大文字に変えて「名詞化」されます。  男性・女性の冠詞を付けて男女を区別し、複数では定冠詞および無冠詞で名詞化します。 その名詞は形容詞の意味する性質を有した「人」に限られます。 また名詞化されても格変化は行われます。たとえば ” schön “(美しい)を名詞化すると;

  • der Schöne       その立派な人(男性・単数)
  • ein Schöner      ある立派な人(男性・単数)
  • die Schöne        その美女(女性・単数)
  • eine Schöne      ある美女(女性・単数)
  • die Schönen      その美男・美女たち(複数)
  • Schönen             美男・美女たち(不定の複数)

 中性の冠詞を付けて名詞化すると、形容詞の性質そのものを指したり、そうした性質を有する事物を意味します。 複数形はありません(人の複数形と重なるので)。

  • das Schöne 美、美しいこと、美しいもの

不定代名詞と組み合わせて

  • etwas Schönes 何か美しいもの、何かすてきなこと
  • nichts Schönes 美しくもなんともないもの、特別すばらしくもないこと

形容詞の独立用法(形容詞の名詞的用法)

すでに話題となった事柄、改めて言うまでもない名詞は省略されて形容詞だけが述べられます。 たとえば「ヴァイオリン」が話題になっていて、「新しいヴァイオリンが欲しい」と言う場合に、ヴァイオリンは省略して「新しいヤツが欲しいんだ」という言い方です。

  • Ich möchte eine neue Violine kaufen.  → Ich möchte eine neue kaufen.

この用法の場合には形容詞の頭が大文字にはなりませんので、「名詞化」と混同しないように注意が必要です。