副属和音(Secondary Dominant)を徹底解説①

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音階固有和音と借用和音

 調性音楽において和音(コード)は、大きく分けて3つ種類に分けられます。各調(キー)固有の音階音のみを使う固有和音、その構成音の一部を変化させた変化(変位)和音、非和声音が混じることで生まれる偶成和音の3つです。そしてそれぞれが基本的に3つの機能のいずれかに属しています(判定基準は根音の度数や三和音の性格から決まります)。その機能とはトニック・コード(主和音)、ドミナント・コード(属和音)、サブドミナント・コードの3種類です。トニックは、その調の主役であり、出発点・終結点としての役割を持っており、音階のI度音を根音(ルート)に構成され、決して替えがききません。もしトニックを変えたければ転調するしかないのです。大まかな言い方をすれば、ドミナントはトニックに向かう力が大きく、サブドミナントはトニックから離れようとする力が強い性質を持っています。

 ある調において、その調に属する(つまりダイアトニックな)コードだけでも曲は成立します。しかし7種類のコードだけでは和声進行に単調さが伴いがちです。そこで変化和音を使ったり、他調の和音を一時的に使うことでより多彩な響きを得ることができます。この一時的に使われる他調の和音を借用和音と呼びます。

 借用和音のうち、もっとも頻繁に使われるのが副属和音です。英語では「Secondary Dominannt」、ドイツ語では「Subdominante」と言います。ドミナントはトニックへ進む強い進行力をもっています。つまり、ドミナントは非常に不安定感に満ちているため、トニックに進むことで安定感・解決感を得ることができるのです。ドミナント和音は、長調(メジャー・キー)では音階のV度音上に形成されます。また不完全な形としてVII度音に形成される和音が使われることもあります。両方とも音階のVII度音を含み、その音は導音として主音(トニック)に解決されます。短調には本来、導音は存在しませんのでVII度音を半音上げることで人工的に導音の役割を与えています。

 このように、各調のドミナントはトニックと対になっているわけですが、他調にあるこの関係を持ち込む(借りてくる)ことで、音階の固有和音に新たな面を付け加えることができます。具体的には、各和音(ただし、減三和音と増三和音は除く)をトニックと見なし、それに対するドミナント・コードを挿入するという流れになります。

副属和音の様々な使用法

 副属和音の基本的な使い方は以上になりますが、副属和音の別の使い方として、5度下(4度上)のセブンス・コードに進むというパターンもあります。最終的にはそのセブンス・コードはダイアトニック・コードに進むので、ドミナント・モーションが2重になっていると考えればよいでしょう。

 また、ダイアトニックのV7がVImもしくはIIIm(マイナー・キーでは/・・・

 さらに、バリエーションとして、サブドミナント・マイナーへ解決する用法もありますが(I7→IVm)、それとは別にII7→V7にサブドミナント・マイナーを挿入するという特殊な用法もあります。

 

長調(メジャー・キー)の固有和音

 長調(メジャー・キー)では、II度音からVI度音までに形成される三和音は、下の譜例のように、別の調のトニックと見なすことができます。VII度音上に形成される和音は減三和音なので、基本的には除外されます。

 上記の各和音はそれぞれの調のトニックであると同時に、ハ長調の固有和音なので当然、変化記号は付きません。ここでは三和音で表記してありますが、ポピュラー系の音楽理論では四和音が基本となります。

短調(マイナー・キー)の固有和音

 マイナー・キーは、用いる音階が3種類あります。

・自然短音階(ナチュラル・マイナー・スケール)

・和声的短音階(ハーモニック・マイナー・スケール)

・旋律的短音階(メロディック・マイナー・スケール)

 ナチュラル・マイナーに関しては、ただ単にメジャー・スケールを短3度下にスライドさせただけなので、音組織自体は変わりません。度数がズレるだけです。

 ハーモニック・マイナーは人工的にVII度音を半音上げて、導音の機能を持たせているため、その影響で長三和音・短三和音の数が減ります。実際には譜例のように3種類の和音だけが副属和音の対象となります。

 メロディック・マイナーでは更にVI度音も半音上げて、ハーモニック・マイナーで生じる増2度音程を解消しています。楽典書等で、上行形と下行形を分けている、つまり上行形ではVI・VII度音を半音上げ、下行形ではナチュラルで元に戻している解説をよく見かけますが、それは誤りです。実際の音楽では、下行形でも半音上げた形が当たり前に用いられているからです。ナチュラル・マイナーとハーモニック・マイナーは混合して用いられますし、ナチュラル・マイナーとメロディック・マイナーも混合して用いられます。そうしなければ終止カデンツが成立しないからです。

副属和音の使い方

 副属和音、つまりセカンダリー・ドミナントの中身は通常のドミナントとまったく変わるところはありません。最も基本的な使い方はSubV(副属和音)を属七和音にして仮のトニックに解決する方法です。以下の譜例ではすべて基本形で表記してありますが、実際の楽曲では勿論さまざまな転回形や構成音の省略形も用いられます。

メジャー・キーでの副属和音の一覧

C Major (ハ長調)
G Major (ト長調)
D Major (ニ長調)
A Major (イ長調)
E Major (ホ長調)
B Major (ロ長調)
F-sharp Major (嬰ヘ長調)
C-sharp Major (嬰ハ長調)
F Major (へ長調)
B-flat Major (変ロ長調)
E-flat Major (変ホ長調)

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A-flat Major (変イ長調)
D-flat Major (変ニ長調)
G-flat Major (変ト長調)
C-flat Major (変ハ長調)

マイナー・キー(和声的短音階)での副属和音の一覧

A Minor (イ短調)
E Minor (ホ短調)
B Minor (ロ短調)
F-sharp Minor (嬰へ短調)
C-sharp Minor (嬰ハ短調)
G-sharp Minor (嬰ト短調)
D-sharp Minor (嬰二短調)
A-sharp Minor (嬰イ短調)
D Minor (ニ短調)
G Minor (ト短調)
C Minor (ハ短調)
F Minor (へ短調)
B-flat Minor (変ロ短調)
E-flat Minor (変ホ短調)
A-flat Minor (変イ短調)

マイナー・キー(旋律的短音階)での副属和音の一覧

A Minor (イ短調)
E Minor (ホ短調)
B Minor (ロ短調)
F-sharp Minor (嬰へ短調)
C-sharp Minor (嬰ハ短調)
G-Sharp Minor (嬰ト短調)
D-sharp Minor (嬰二短調)
A-sharp Minor (嬰イ短調)
D-Minor (ニ短調)
G Minor (ト短調)
C Minor (ハ短調)
F Minor (へ短調)
B-flat Minor (変ロ短調)
E-flat Minor (変ホ短調)
A-flat Minor (変イ短調)