アヴェイラブル・テンション

アヴェイラブル・テンション

 すべてのテンション・ノートが使用可能でないことはお話ししましたが、ここではその原理をご説明したいと思います。その判定の基準さえ理解できれば、暗記に頼ることなく、使用化・不可が判別できるようになるでしょう。

 テンションにはナチュラル・テンション(natural tension)とオルタード・テンション(altered tension)に分かれます。ナチュラル・テンション・ノートはその調で用いられている音、つまりダイアトニック・ノートを使用したもので、それ以外はオルタード・テンション・ノートとなります。

 以下が判定のルールです。

  1. ダイアトニック・ノートであること
  2. 和声構成音のいずれかと長9度音程を生じること
  3. ドミナント系はオルタード・テンションが使える

 このルールに則って、各コードを検証してみましょう。赤枠で囲まれているテンション・ノートは使用不可を意味しています。

ダイアトニック・コードのアヴェイッラブル・テンション

メジャー・キーのダイアトニック・コードのアヴェイラブル・テンション

11thはEと短9度音程を生じてしまいますので、アヴォイド・ノートとなります。したがって、9thと13thがアヴェイラブル・テンションとなります。#11thのオルタード・テンションがリディアン・スケールからの借用として用いられる場合もありますが、あくまで部分的な使用に限られます。

また、譜例のようにメジャー・セブンスを用いた場合には、メロディにルート音(この場合はC)を使うとこの7音と短9度音程を生じてしまいますので注意が必要です。このことはIV和音にも同様に適用されます。

13thの扱いについては議論が分かれるところです。Bは短9度音程を生じませんが、Fと3全音を生じてしまいます。この音程が、ドミナント・セブンスで生じる増4度を連想させるというのが否定側の理由です。ただし最近は自由に用いられるケースが多くみられます。

9thのFはEと、13thのCはBと短9度音程を生じてしまいますので、使えるテンションは11thのみとなります。

このコードは3種類のすべてのテンションが可能です。Bは#11th(増4度)なので#がついていますが、これはオルタードではなく、ナチュラル・テンションに分類されます。

11thはBと短9度音程を生じてしまいますので、アヴォイド・テンションとなります。ルール3によって、それ以外のすべてのテンションが使用可能です。ただし「♭9thと#9th」「♭13thと13th」を同時に使うことはできません。

♭13th(13thだと#F)はEと短9度音程を生じてしまうので、9thと11thがアヴェイラブル・テンションとなります。

♭9th(9thはC#)はBと短9度音程を生じるので、11thと13thが使用可能なテンションとなります。

ナチュラル・マイナー・キーのダイアトニック・コードのアヴェイラブル・テンション

ナチュラル・マイナーはメジャー・キーが3度ずれただけなので、結果は変わりません。

メジャー・キーのVIと同じです。

メジャー・キーのVIIと同じです。

メジャー・キーのIと同じです。

メジャー・キーのIIと同じです。

メジャー・キーのIIIと同じです。

メジャー・キーのIVと同じです。

メジャー・キーのVと同じです。つまりこのコードはドミナント的な性格が強いのですが、メジャー・キーでのVと同等ではありません。基本的にはIIIに進むべきもので、それ以外の進行は偽終止となりテンションの使用は控えるべきかもしれません。

ハーモニック・マイナー・キーのダイアトニック・コードのアヴェイラブル・テンション

Bナチュラルになったため、13thは使えなくなりました。

和声的短音階ではAとEはフラットなので、ナチュラルテンションとは異なるため使用不可となります。したがってオルタード・テンションのみが使用可能になっています。

メロディック・マイナー・キーのダイアトニック・コードのアヴェイラブル・テンション

♭9thはジャズ等のツー・ファイブでよく用いられます。II-Vの両方で♭VI音を用いることで、メロディック・マイナーの性格を不明瞭にするためです。

セカンダリー・ドミナント・コードのアヴェイッラブル・テンション

セカンダリー・ドミナント・コードはドミナント系のコードなので、ダイアトニックのVと同様、オルタード・テンションが使えます。ただし、ルールによって使用不可なものもありますので、それを検証してみましょう。

メジャー・キーでのセカンダリー・ドミナントのアヴェイラブル・テンション

セカンダリー・ドミナントはドミナント系のコードですから、オルタード・テンションが使えます。ただし、調固有の音以外が使われますので、その分、ナチュラル・テンションもフルイにかけられます。VIIに対するセカンダリー・ドミナントがないのは、そのコードのルートがノン・ダイアトニック・トーンだからです(例えばCメジャーだとF#)。

ナチュラル・マイナー・キーでのセカンダリー・ドミナントのアヴェイラブル・テンション

ハーモニック・マイナー・キーでのセカンダリー・ドミナントのアヴェイラブル・テンション

ハーモニック・マイナー・スケールではVII度音がナチュラルになるため、セカンダリー・ドミナントが成立するのは次の3つに限定されてしまいます。

IVに対するセカンダリー・ドミナントのテンションは自然短音階と同じです。

Vに対するセカンダリー・ドミナントは、VII度音の導音化によってテンションが可能になっています。

VIに対するセカンダリー・ドミナントは自然短音階と同じです。

メロディック・マイナー・キーでのセカンダリー・ドミナントのアヴェイラブル・テンション

旋律的短音階ではVI度音も半音上がるため、やはりセカンダリー・ドミナントが成立するコードは以下のように限られます。VIに対するセカンダリー・ドミナントはルートがEナチュラルになるため、非ダイアトニック・トーンなので不成立です。代わりに、IIに対するセカンダリー・ドミナントが使えるようになります。

セカンダリー・ドミナントのツー・ファイブにおけるリレイテッドIIm7のテンション

ツー・ファイブにおけるIIm7(およびIIm7(♭5))は正式にはリレイテッドIIm7と呼ばれます。このリレイテッドIIm7がセカンダリー・ドミナントで用いられる時のテンションを検証してみましょう。

リレイテッドIIm7のテンションを考える場合、まずセカンダリー・ドミナントの解決先のコードをメジャー・キーのトニックと想定します。例えば上の譜例の場合はAメジャーとなります。実際に解決しているのAm7なのでAマイナー・キーと考えがちですが、これはあくまでもそういう決まりなのだと覚えるしかありません。そうすると、13thはIIm7の3音と増4度を生じるという理由で(これはダイアトニックの場合と同様です)、9thと11thが使用可能となります。譜例はあげませんが、検証をしていくと、ツー・ファイブのリレイテッドIIm7のあwヴェイラブル・テンションはどれも共通して9th11thだという結論が出ます。

 II/V7のリレイテッドIIm7(Cメジャー・キーであればEm7)は、リレイテッドであると同時に、ダイアトニック・コード(Cメジャー・キーではIIIm7)であるという二重の性格を帯びています。したがって、ダイアトニックではない9thをあえて使わないという選択肢があることを覚えておいてください。これはVIm7にも言えることです。

 もしセカンダリー・ドミナントの解決先をマイナー・キーとして考えるのであれば、IIm7(♭5)を使うこともできます。

この場合は、使用可能なテンションは11th♭13thになります。♭13thはナチュラル・テンションだとは思えないのですが、今のところ私には理由がよくわかっていません。力不足で申し訳ありませんが、そういうものだと覚えてください。このアヴェイラブ・テンションは、セカンダリー・ドミナントのツー・ファイブでのリレイテッドIIm7(♭5)すべてに共通します。

エクステンデッド・ドミナントのアヴェイラブル・テンション

ドミナント・コードが完全4度下行を連続して続く進行を「エクステンデッド・ドミナント」と呼びます。これはクラシック音楽でもよく見られる手法で、基本的には主調のV度に達した時に終了させます。

このエクステンデッド・ドミナントでのアヴェイラブル・テンションはどうなっているのでしょう。基本的にはV/V7のアヴェイラブル・テンションに準じることになっています。

ただし、曲の途中からドミナント7thの連続が始まる場合、最初のドミナント・コードが次のドミナント・コードに進んだ瞬間に「偽終止」と感じ取られます。そのため、この場合にはセカンダリー・ドミナントのアヴェイラブル・テンションに準じることになります。例えば、

この場合のB7はIIIm7へのセカンダリー・ドミナントとなりますから、そのアヴェイラブル・テンションは「III/V7」に準じることになり、セカンダリー・ドミナントの項で示したとおり、オルタード・テンションのみが可能となります。

もしマイナー・キーでエクステンデッド・ドミナントを用いるのであれば、マイナー感を強調するために、オルタード・テンションだけ使うという手もあります。

同種類のテンションを連続して使えばコード進行が統一感ある結果となりますし、コードごとにテンションを変えれば変化の大きな効果が得られるでしょう。状況に応じて使い分けると良いでしょう。