新ギター苦肉のテクニック;Sorに挑戦 (1)

ソル作曲『魔笛の主題による変奏曲』Op.9

Introduction

ソルの『魔笛の主題による変奏曲』はぜひレパートリーに加えたい1曲です。ソルが作曲したギター曲はたくさんありますが、ソナタは難易度が高いし、ある程度の長さが欲しい時に「変奏曲」は大きな候補になります。ただし、ソルの変奏曲もけっこう難易度は高いです。その主な理由は(僕にとっては)左手のフィンガリングなのですが、その中でもこの曲は比較的とっつきやすいのではないでしょうか。

 今回はその序奏部分に挑戦してみましょう!

楽譜を眺める

 練習を始める前に必ずしなければならないことがあります。色々と挙げられますが、絶対に外せない事を一つ挙げろと聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか?

 私が真っ先にあげるのは「運指の決定」です。これが決まらなければ、練習が進みませんから。もちろん修正が必要な場合も出てきますし、運指を考えることも練習の一環なのですが、それでもやはりある程度、8割くらいは決めておきたいと思います。

 たいていの楽譜には運指が記されています(原典版は例外)。そこにある運指は、校訂者や編者が良い(または普通)と思っているものが記されています。セゴビア・エディションなどは完全に独自的ですが、たいていの版は常識的な線を狙っているものです。けれどもそれがあなたに合っているとは限りません。その通りに弾けたとしてでもです。

 ですから私は全体をさらっと弾いてみます。ただ初見が苦手だったら無理をする必要はありません。練習はセクションごとに、つまり分割して行うのが普通なので、例えば最初の4小節だけにフォーカスして、運指を決めていけば良いと思います。

 では前置きはこれくらいにして、さっそく楽譜を見てみましょう。

 この曲は本体がホ長調(E-major)なので、序奏は同主調であるホ短調(e-minor)になっています。拍子は4分の4拍子。テンポは「アンダンテ・ラルゴ」です。本体が「アンダンテ・モデラート」であることを考えると、それほど遅くする必要はないと思います。

1−8小節

 最初の8小節はIとV7の交替のみです。

 この部分では技術的にどんな困難があるでしょう?

 1小節目は6弦全奏の必要があります。使える指は最高でも5本しかありませんから、どうにか対処しなければなりません。最後に現れる16分音符もリスムが取りにくいポジションにあります。

 3小節は、バスを保持したまま上声部で和音を変えるという難しさがあります。

 7小節ではハイポジションでのスラーが2回続きます。

左手の運指

3−4小節

 1−2小節の左手は問題ないでしょう。3小節3拍目は譜例の方法しかありません。1拍目で押さえている小指(4)をスムーズに動かすには、2拍目で押さえた中指(2)に重心を移すようにして小指を浮かしつつ2フレットに移動させます。その時に人差し指(1)と薬指(3) を伴って逆V字を作るようにすると同時に押さえやすくなるはずです。

 4小節ではポジションが1つ上がります。3拍目のD#を小指で押さえる時には、1弦にも指の腹を触れさせて消音するようにすべきです。この消音のテクニックはけっこう使いますし、重要ですからぜひ習得してください。

 下声部は2分休符になっていますが、D#を消音する時まで延ばしていても問題ないでしょう。今度の消音は、右手で行います。弦をはじくのに使った指を弦に当てて振動を止めてもよいですし、親指の側面を弦に当てる、小指側の手の側面を当てる、手の平を当てる・・要するに弦の振動が止まればいいのです。お好きな方法でどうぞ。

5−6小節

 5−6小節の左手は、この押さえ方しかありません。残念ながら。ですから、頑張って、でも力まずに、練習しましょう。身体が覚えてくれるまで。

 ちなみに、あなたにとって初めての押さえ方が出てきた時に、どうやって練習していますか? 特にコードを押さえるというのは、複数の指を同時に目的のフレットに置かなければならないから難しさが増すんですよね。指を器用に独立して動かせる人以外にとって、コードを押さえるというのは大きな壁なんですね。そこで練習の仕方のヒントを一つお教えしましょう。

 同時に押さえるから難しい→時差をつけて押さえると少しは楽。と言われてもピンときませんか。具体的に言うとですね、アルペジオにして練習してみよう、ということです。それも、色々と順番を変えてですね。

特別付録(というほどのものではないが)

 これ、右手は使いません。左手で順番に押さえていくだけです。均等に、とか気を使う必要もなし。とにかく、できるだけ速く押さえられれば良しとしましょう。でも次に押さえた指で前の音を消していないか、つまり4つ目の音符で4つの音全部が鳴っているかどうかだけは気にしましょう。これなら夜中?でも練習できますね。それで「うるさい!」と文句を言われたら、あなたは上行スラーのテクニックを完成しつつあるという目出度い状態にあるわけですから、喜んで結構です。

 これをやるかどうかはお好みで。というのも、右手のテクニックが足をひっぱる可能性があるので。あとは、こんな方法もあったりして。

 タイでつながれた音は右手ではじいても良し、左手のリガートでも良し。同時に押さえる音が増えていくので、難易度は上がってます。指の硬い人はつらいかも。全部できなくてもいいんです。最終目標は、このB7コードを同時に押さえることですから。

苦肉のテクニック

 このテクニックを使うには、かなり条件が限られますが・・・この5小節を弾くまでには少しだけ間がありますね。その間に、何本かの指だけでも押さえておくという手もあります。なにも音を出す直前に押さえる必要はない訳で。ただし音が出ないように、そーっと押さえてあげましょう。

7−8小節

 難しくはありません。オクターブのB音の下側を2弦の開放で弾くか、3弦で弾くか、4弦で弾くか、それは好みですね。4弦を選ぶ人は少ないと思いますけれど。楽なのはもちろん開放弦です。その場合、1弦のリガードを3−4指で行うのであれば、次小節の「E, G」は1・2弦を使うのが自然ですが、もし1−2指で行なうとしたら2・3弦もありです。

右手の運指

1−2小節

 1−6弦のすべてを同時に弾かなくてはなりません。どうしたら良いでしょうか。

 3つの方法が考えられます。親指で全弦弾き下ろす方法。6−4弦は親指を滑らせて弾き、3弦を人差し指、2弦を中指、1弦を人差し指で弾く方法。6−5弦は親指を滑らせて、残りの4−1弦を人差し指から小指まで使って弾く方法、です。どれが良いとは断言できません。ただ言えるのは、曲の開始にふさわしい、堂々とした響きが求められていることです。全弦を同時に鳴らすのは、この部分と、曲の終わりの1小節前の部分だけです。それだけに、他とは違う雰囲気を出さねばなりません。

 私はここに金管のファンファーレをイメージするのですが、それもトランペットではなく、ホルン的な感じの。

 ここで難しいのはむしろ、複付点音符の後の16分音符と2小節冒頭のコードのタイミングではないでしょうか。16分音符をどの指で弾くにせよ、最上声部のリズムがきちんと聞こえてくるようにしなければなりません。5−6小節も同じことが言えます。

 5−6小節も1音減ったとはいえ、通常の4本指では対応できません。冒頭でどう弾くかを決めたら、同じ方法を使いましょう。

ダイナミクス

 ここはいろいろな考え方があると思いますが、私は「1−2:フォルテ、3−4:ピアノ、5−6:フォルテ、7−8:ピアノ」と強弱をつけて弾くのが好きです。ぜひ色々と試してみてください。