楽譜のしくみ

五線

五線譜は、単に5本の平行線を引いただけでは楽譜としての用をなしません。最低限必要な記号として、音部記号と拍子記号が必ず記されねばなりません。

五線譜の各線、各間(線と線の間)には名称が付けられています。

もし五線の範囲に収まらない音高の音は、線を足して(加線という)音符を記します。加線にもやはり場所ごとの名称が決まっています。

音符が置かれる位置は、線上か線間のいずれかになります。線間に記す場合は、音符の玉の上下が線に接するように書きます。

小節線は基本は1本線ですが、他にもバリエーションがあります。特に頻出するのは楽譜の終了を示す終止線、小節の反復を示すリピートマーク(本来は反復を表す記号ですが、もちろん小節線も兼ねています)、楽譜内の段落を示す複縦線、などがあります。

終止線

ピアノやオルガンといったキーボード類、ハープなどの楽器の楽譜は、高音部譜表と低音部譜表を結合した大譜表を採用しています。これで広い音域に対応できるのですが、オルガンやエレクトーンではさらに、ペダル用の五線が追加されます。

小節 (bar)

五線譜は縦線で区切ることで小節を形成します。この縦線を「小節線」と呼びます。

小節線
縦線の種類

小節線はどんな拍子の時も、線の直後の拍が強拍(下拍)となります。

複数の五線譜を重ねるためには、以下のような括弧(bracket)を使います。

大譜表(ピアノ譜等)では、小節線は上から下まで途切れずに引かれます。

管弦楽、吹奏楽など異種の楽器群が使用される楽曲では、すべての楽段を1本の直線で繋ぎます。

小節番号

小節は1から数え始め、各段の先頭部分に、小節番号が記されます。

音部記号

五線譜上の各音符の音高を確定するには、音部記号がなければなりません。

ト音記号

高音部記号とも呼ばれます。中音域から高音域での記譜に用いられます。

この記号がなぜ「ト音記号」と呼ばれるのでしょう。それは、この記号の渦巻きの中心が「ト音(G)」を指し示しているからです。ちょっと想像し難いかもしれませんが、この記号はアルファベットの「G」が変化したものなのです。

ですから、この線上にある音がト音ということになります。通常の高音部譜表では、この位置が第2線のところに位置しています。

ト音の位置が第1線に位置する譜表もあります。

ヘ音記号

ヘ音記号は程音部記号とも呼ばれます。2つのドットに挟まれた第4線がF(へ音)を示しているところから、この名称があります。

ハ音記号

ハ音記号は、Cというアルファベットが変形してできた記号です。ちょうど真ん中の部分がC(ハ音)に相当します。

ハ音記号は置く位置を上下させることで五線の音域を変えることができます。

ギターは、実際の音域が低音部譜表で記譜されるべき楽器なのですが、慣習的に高音部譜表で記譜されています。そこで実音は1オクターブ低いということを示すために下例のように「8」の数字を書き足すことがあります。ただ、最近の楽譜ではこの書法は滅多に見なくなりました。

音符

音符は符頭(通称、玉)と棒、旗から成ります。

旗の細分化
音価の比較
全音符の細分化

付点音符は、付点がついていない状態の音価+その半分の音価を表します。つまり、付点がついていない音価の1.5倍の音価と言い換えることができます。

複付点音符は点を2個付けて表します。ちょっと複雑ですが、付点がつく前の音価の1.75倍の音価を表しています。複付点音符は直感的に音価の把握をするのが難しいので、なるべくタイを使って記譜したほうが演奏者に喜ばれるでしょう。

音符は以下のように細分できます。どれも4分音符の音価と同じです。

三連符
3連符を使った様々なリズム

3連符は、細分化したり、休符と組み合わせて様々なリズムに変化させられます。

複数の音符を連桁(横棒)を使って書き表すことができます。

連桁は、私が想像するに、二つの音符の旗が結合した結果ではないかと思われます。

連桁の各部分には名称があります。ただ、これらの用語が使われることは滅多にありません。

連桁は音符群をグループ化することによって、フレーズを明確にする効用があります。譜例のフレーズは一時的に3/4拍子になっていることをはっきりと示しています。

連桁(れんこう)で繋がれた音符の旗が1本ならば(8分音符、付点8分音符)それは連桁に代用されますが、それ以上に旗がある場合は、譜例のように短い線で示されます。1番の裏拍の音はすべて16分音符を表しています。2番は32分音符です。

連桁(れんこう)は下の譜例のように、大譜表の上下段の音符を連結することもできます。

また連桁(れんこう)は休符をまたいで使うことができます。

休符

休符の長さは各音符の長さと同等です。それは付点が付いても変わりません。

臨時記号 (accidentals)

臨時記号は変化記号とも呼ばれますが、その記号が付けられたら音は「派生音」と言います。

シャープは「嬰記号」と呼ばれ、指定の音を半音上げる指示になります。もし既にシャープがついている音を更に半音上げたい場合にはダブルシャープ(重嬰記号)が使われます。

白鍵が隣り合った音でも、変化記号は用いられます。

一方、フラット(変記号)は指定の音を半音下げる指示です。こちらもやはり、既にフラット記号が付けられている音を更に半音下げるにはダブルフラット(重変記号)が用いられます。

ナチュラル(本位記号)は、小節内の派生音を再び元の高さに戻すために使われます。

ナチュラル記号は調号で変化されている音にも効力を持ちます。下の譜例では、フラットが4つの調号で、楽譜内の全てのB音、E音、A音、D音を半音下げるように指示されています。そこでナチュラル記号を用いることで、一時的にその効力を無効にしているのです。

下の譜例のように、すでに変化記号がついている音をさらに変化させる時にだけ「ダブル・シャープ」「ダブル・フラット」の記号が用いられます。

臨時記号は小節内でしか効力を持ちません。したがって、下の譜例の2小節目のE音とD音は1小節目のナチュラルには影響を受けず、実際には調号の効力通り、E-flat(変ホ)音とD-flat(変ニ)音ということになります。

臨時記号は小節内の、更には同一音高の音符にしか効力を持ちません。したがって下の譜例の第1小節4拍目のG音は、先行する1オクターブ下のG音につけられたシャープの影響を受けないのですが、混乱を招かないよう、敢えてナチュラル記号を付けているのです。また2小節目のG音とF音はもう臨時記号とは関係がないのですが念を入れてナチュラル記号を付けています。ですから、わざわざ括弧でくくっているのです。

一つの譜表に2声部が記されている場合、そこに現れる変化記号(臨時記号)の判断は誤りやすいので、注意が必要です。

下の譜例では、フルート1とフルート2が同時に記されています。1小節目のフルート2のD音にはナチュラル記号が付されていますが、もしフルート1の2拍目の裏(16分音符)にもナチュラルが付されていなければ、この音はD-flatのままです。この楽譜はたまたま2つの声部が一緒に書かれていますが、互いに独立した存在ですので、他声部の変化の影響はいっさい受けないのです。

拍子・拍子記号

拍とは一定時間の間隔で刻まれるパルスです。下図のように拍が同一の強度で刻まれるのであれば、そこに拍子は生じません。

しかし、強弱強弱・・・というふうにアクセントの変化をつけると、そこに拍子が生じます。下図は2拍子です。

強弱弱強弱弱・・・にすれbさ3拍子となります。

楽譜に記す場合には、この周期を明確にするために、強拍の前に小節線を引きます。

拍子記号

楽譜の先頭部分には必ず拍子記号が描かれます。それは2段の数字で示されますが、上段の数字には拍子の拍数が当てられます。

そして下段の数字は、拍の基本単位となる音符の種類を示しています。

拍子は、異なる単純拍子を組み合わせることで、特殊な拍子を生み出すことができます。こうして生じる変拍子の拍子は「混合拍子」と呼ばれます。

速度記号・速度標語

演奏の速度を指定するには2通りの方法があります。1つは、メトロノーム記号と呼ばれるもので、基本音符の1分間に刻む回数を指示する方法です。正式には下例のように「M.M.」と記しますが、下段のように省略した楽譜も数多く見られます。

フェルマータ記号は音を長く伸ばす、つまりテンポの一時的な中断を意味します。

フェルマータ記号が小節線(特に複縦線)の真上に置かれた場合は、終止を意味します。

強弱記号

音の強さを指定するのが「強弱記号」です。音の強さは絶対値ではなく、相対値なので、曲ごとに強度を設定する必要があります。

上記の強弱指示は、ある程度の時間内で保たれるものですが、下記の強弱記号は1音あるいはフレーズで強度を漸次変化させる指示となります。

速度標語には、以下のような副詞が添えられることもあります。

下記の強弱記号は、急激な強度の変化を求める指示です。

急激な強度変化を求める記号もあります。

反復記号

楽譜の一部を2回以上繰り返すためには通常の小節線ではなく、下記のような反復記号を伴う小節線を用います。この反復記号に囲まれた(:の位置に注意)部分が繰り返し演奏されます。繰り返しの回数は、小節の上に記される括弧で決まります。もし括弧が無ければ、繰り返し回数は2回です。

Repeat mark

括弧が用いられていれば、その括弧には必ず数字がふられていますから、その数字分の回数だけ繰り返します。

反復記号に挟まれた小節は繰り返し演奏されます。括弧が併用されている場合は、演奏内容に変更が行われます。

下記の例では、最初の演奏を1番括弧内まで行い、そこでリピート記号の先頭に戻り、次は1番括弧を飛び越して、2番括弧に進みます。

D.C.は「ダ・カーポ」と読みます。「最初に戻れ」という意味です。もし、これ以外の記号や指示がなければ、反復記号と同様、同じ内容を2度繰り返せという指示になります。

al Fine は終止記号(Fine)のところで終止せよ、という意味です。そこには福縦線が引かれています。下の譜例を演奏するには、まず先頭から最後のD.C.記号のところまで進み(①)、冒頭に戻って繰り返して、Fineで終了します(②)。

D.C.は「ダ・カーポ」と読みます。「最初に戻れ」という意味です。al Coda は「反復した後は、コーダへ進め」という意味です。アルファベットのOと十字が合体したコーダ・マークがあるところは、コーダ部分へ飛ぶ位置を示しています。したがって下の譜例を演奏するには、まず服従線のところまで進み(①)、先頭に戻ってからコーダ・マークのところまで進み(②)、そこから独立したコーダ部分へと移って、終止線で終了(③)します。

D.S.は「ダル・セーニョ」と読みます。セーニョ記号(Sに斜線を足したような記号)まで戻れという意味です。冒頭に戻らない点以外は、上述の手順とたいして変わりありません。

反復記号のまとめ

音程

半音と全音
音程
2度音程
3度音程
4度音程

4度音程は大半が、半音が5個からなる「完全4度」ですが、F音とB音の音程のみ半音が6個の「増4度」となります。

5度音程

5度音程は大半が、半音が7個からなる「完全5度」ですが、B音とF音の音程のみ半音が6個の「減5度」となります。

6度音程
7度音程
8度音程
複音程

8度音程を超える音程は、複音程と呼ばれます。対象となる音のどちらかを1オクターブ下げるか、1オクターブ上げることによって通常の単音程(1オクターブいないの音程)が得られます。

複音程の度数から7を引くと、単音程の度数が得られます。

音程の種類

音程は度数だけでなく、その前に音程の種類を示すことで完全な表示となります。すでに長短・増減の記号が使われている表示がありましたが、その使い方のルールを一覧にしてみます。

例えば、長2度は半音増えれば「増2度」となります。逆に半音減れば、減ではなく「短2度」となります。さらに半音減った時に「減2度」なるのです。

完全5度の音程変化
転回音程

2音の上下関係を入れ替えることを転回と言いますが、その時に生じる音程名には規則性があります。

完全音程の場合は、転回しても「完全」のままです。

長短音程の場合は、長音程を転回すると「短音程」に、短音程を転回すると「長音程」に変わります。

増減音程も同様で、増音程を転回すると減音程に、減音程を転回すると増音程に変わります。

複雑な音程の判別法

変化記号によって音程がすぐにわからない時は、一度変化記号を外してから、片方ずつ適用することで、最終的に正しい音程が判別できます。

調と調号

長調の音階

長調の音階を特徴付けているのは、3番目の音(Ⅲ度音)と4番目の音(Ⅳ度音)が半音であること、そして7番目の音(Ⅶ度音)と主音(Ⅰ度音)が半音であることです。主音が変わっても、この音程関係は絶対に変わりません。

以下に挙げた各音階がハ長調の音階と同じ配列であることを確認してみてください。

短調の音階

短調には3種類の音階があります。その中で、自然的短音階と呼ばれるものは、長調の第6音から始まるもので、長調の音をそっくりそのまま使っています。したがって、全音と半音の並び方は、ずれているだけです。

調号は、表現したい調の音階を整えるために全体にわたって変化記号を集約したものです。

調号にシャープがつけられるのは、以下の手順によります。なぜ、Cメジャー・キーの次のキーがGメジャー・キーになるのかは、G音がC音の完全5度上だからです。その次のキーはDメジャー・キーになりますが、やはり同様の手順で、#が2つに増えます。ご自分で、楽譜を書いて#が7個になるまで検証してみると良いでしょう。

フラットが増えていく手順は下例ののようになります。キーは完全5度下の音になります。こちらもフラットが6個になるまで、ご自分で検証すれば、より理解が深まることでしょう。

調号と主音の位置(シャープ系)
調号と主音の位置(フラット系)
5度圏

以上の各キーを、完全5度の上昇・下降で配列した図を「5度圏」と呼びます。下図では簡略した形で示していますが、実は内側にマイナー・キーも示されるのが本来の姿です。例えばCメジャーの内側にはAマイナー、Gメジャーの内側にはEマイナーといった具合です。

キーの判別

シャープ系の楽譜では、メジャー・キーの判別は簡単です。一番右側にある#の2度上の音が主音になるからです。その短3度下の音がマイナー・キーの主音であることはもうお分かりでしょう。

調号に示された変化記号は、調号が変わらない限り、全ての音域に対して効力を持ちます。

譜例の1小節目、第1音のCはパッと見、なんの変化もないようですが、冒頭の調号を見るとCを半音上げるようシャープが書かれています。したがってこの音はC-sharp(嬰ハ音)となります。2小節目最後のC音は加線上に置かれた高い音ですが、やはり調号の効力によって半音上げられています。

こうして1音1音の高さを確かめるのは、初めのうちこそ大事ですが、本当は調号とその調の音階音を覚えてしまうことのほうが重要であり、早道でもあります。長調と短調に限っては、どの調も規則正しい配列となっていますので、一度覚えてしまえば応用が効くでしょう。

音名

音域別音名表示

音名を表す時に、その音域に応じて表記を変えることが多々あります。例えば、カタカナで表記した「ハ」という音名とひらがなで表記した「は」という音名は1クターブの差があります。ひらがな表記の音はカタカナ表記の音より1オクターブ低い音域を表すために用いられるのです。カタカナ表記の音よりもさらに高い音域を表示するには、文字の上に点を増やして対応します。同様に、ひらがな表記の音よりもさらに低い音域の音を表示するには、文字の下に点を増やすことで対応します。

日本語表記

英語での音域別音名表記は、点は使われません。その代わりアポストロフィーと数字を使います。また当然、ひらがな・カタカナはありませんので、アルファベットの小文字・大文字を使い分けます。

英語表記

ドイツ語では小文字・大文字と、小さな数字を右肩、もしくは左下に付記することで区別します。

ドイツ語表記

アーティキュレーションに関する記号

スラーとタイは同じ弧線を使っているので、一見混乱しそうですが、スラーは基本的に違う音高の音符をつなぎます。同音高の音符が弧線で繋がれていたら、それはタイと判断できます。

レガート記号

スラーは音を断続させずに、つまり弓を返したり、弦をはじき直したり、アタックし直したりせずに音をつなげることを意味し、それはテクニカル用語でもあるのですが、譜例のような弧線は、あくまでも滑らかさを求めているにすぎません。また、フレーズの区切りを明示するために用いられることもあります。

スタッカートとその仲間

音符の真上、または真下に記された点は、付点ではなく、スタッカートを表しています。スタッカートは付された音符の音価を半分にするとの説明がよく見られますが、

スタッカートをもっと鋭く奏するための記号が、スタッカーティシモと言われるもので、クサビ形をしています。

テヌート記号とスタッカート記号を併用すると、メゾ・スタッカートの指示になります。やや長めのスタッカートという解釈が一般的ですが、下例2番のように奏されることもあります。

テヌート記号
アルペジオ

縦に記された波線はアルペジオの指示です。アルペジオは「分散和音」という意味ですが、ここでのアルペジオは各音を微妙にずらして演奏する奏法を指します。 

略記法

装飾音符

同じフレーズが繰り返される場合、記号を用いて記譜を省略することができます。

下記の例では小節内での同音型の反復を略記しています。

下記の例では1小節が3回繰り返されることを示しています。

下記の例では、複数小節の繰り返しを略記しています。

オクターブの省略
マルチ・レスト

下記の例は、「マルチ・レスト」と呼ばれる略記法です。パート譜でよく使われていますが、2小節以上にわたって休みが続く場合の書法です。

休む小節数の表し方には下記のように色々とあります。

様々な奏法に関する記号

ペダル指示

ピアノにはペダルが付いており、次のような仕様となっています。

ソスティーンペダルの楽譜上の指示

ソスティーンペダルの指示に関しては、線で示すタイプと、ペダル記号で示すタイプがあります。

グリッサンドとポルタメント

「グリッサンド」はある音から次の音まで、半音・全音単位の変化を伴う移行です。一方、「ポルタメント」は無段階の変化による移行です。

したがって、ピアノやギターでは「グリッサンド」は可能ですが、ポルタメントは不可能です。一方、ヴァイオリン属の弦楽器では「ポルタメント」は可能ですが、グリッサンドは非常に困難だと言えます。

グリッサンドには、到達した音を弾き直す奏法があり、その場合は小音符によって示されます。

ハーモニクス、フラジョレット

ギターやヴァイオリン属等の弦楽器の特殊奏法。音符の符頭がダイヤモンド形で記されることが多い。